Words from the interviews
with Francis Bacon by David Sylvester
This is the obsession:
how like can I make this thing in the most irrational way?
So that you`re not only remaking the look of the image.
you`re remaking all the areas of feeling
which you yourself have apprehensions of. (1962)
こんなことが気になって仕方がないんだ。
どうやったら全く理性的でない形で作品を作ることができるだろう。
見た目の上でだけイメージをつくり直すのではなくて、
私たち自身が把握している
あらゆる感覚の領域を
つくり変えたいんだ。(1962)
I realized when I was seventeen.
I remember it very very clearly.
I remember looking at a dog-shit on the pavement
and suddenly realized, there it is - this is what life is like (1975)
17歳の時だった。
あの時のことは、ものすごく鮮明に覚えているよ。
道端の犬の糞をみて不意に悟ったんだ。
そうか、
人生とはこのようなものだとね。(1975)
これはベーコンがデイヴィッド・シルベスターというインタビュアーの質問に答えた際の内容です。(フランシスベーコン インタビュー参照)
2012年に東京国立近代美術館で大規模なベーコン展が30年ぶりに行われていましたが、初めてベーコンの絵を一堂に見る機会に接し、とても感慨深い思いをしたことをよく覚えています。
当時私は大学院を修了し、その後どうするかも定まっていないような状態でふらふらと観に行ったのですがとても感慨深く考えさせられた展覧会でした。
ベーコンの絵はまさに感覚の領域を作り変える(ドゥルーズが『感覚の論理』という本を出しています)という言葉が当てはまるような作品で既存の言葉で表現しがたい不思議な感情が沸き立ちます。
有名な教皇の絵。
トリプティック、という三連作の絵もよく制作しています。
なんとも言えない次元の歪んだような空間と質感がいわゆる「きれい」「リアル」などとは全く異なる感覚を引き起こします。
そして個人的にはよくベーコンは自殺などせず最後まで生きていたなぁ、と思います。アルコール依存、薬物依存、同性愛、愛人の自殺、など色々と過激なことが付随している人だったのですが82歳で肺炎で亡くなるまで精力的に作品を作っていたようです。
ちなみにベーコンは同性愛者であり恋人のジョージ・ダイアーはベーコンが62歳の時に自殺で亡くなっています。ダイアーと知り合ったきっかけはベーコンの家にダイアーが泥棒として天井から侵入したら天井の床が抜け落ちてベーコンのアトリエに直下したことがきっかけだったそうです。そこでダイアーを一瞥したベーコンはダイアーを警察ではなくベッドに誘ったとのこと。(連れてく場所が違うだろ)
泥棒のダイアーよりベーコンが逆に警察に連行されそうな話です。
それと、直接的な関係はないのですがベーコン論を書いたフランス哲学界の大巨匠ジル・ドゥルーズも最後はアパートから飛び降りて自殺しています。)
ベーコンは一貫して絵のスタイルが大きく変わっておらず、誰が見てもベーコン!とわかるのですが、どの年代の作品を見ても一貫したねじれのようなものがあり、不思議な感覚に陥ります。
また別の作家ですがインド出身の現代美術作家にアニッシュ・カプーアという人がいるのですが(いずれ取り上げる予定です)同じように感覚器官に訴えかけるような作品を作っており、いわゆる視覚的に『きれい』であることや『何が描かれている』を重視するような作品を作る作家ではありません。
このなんとも言えないショッキングな感じが似ていると思います。テートモダンでの個展の際の作品ですが、すべて壁は塗り直しでしょう。(スタッフ大変そう…)
あくまで絵が上手いことや綺麗であるということは作品を評価する上でのいくつかある評価軸の評価の仕方の一つであってそれが絶対的なものではありません。とくに現代美術という分野は既存の見方や価値観をどんどん発展させていくことで発展していった分野です。そういった絵の見方をいくつももって様々な作品を見ると一見難解な作品も楽しんで鑑賞できるようになっていきます。
それと、ベーコンのことで面白いのは部屋がとにかく汚いということです!絵もカオスなのですが部屋も同じような感じで、これは自分の子供がベーコンだったら普通のお母さんは激怒するレベルだと思います。以前の展覧会でも美術館内にベーコンの部屋を再現したコーナーがあったと思うのですが、本当汚すぎだろ!!!と思った記憶があります。
ちなみに現在六本木の新国立美術館で開催されている佐藤可士和展の佐藤可士和さんは以前テレビで見たのですが携帯の角度が取材時に数度直角からずれているだけできっちり直すくらい非常に神経質で仕事部屋も微塵の隙もなくものが綺麗に整理された環境でお仕事をなさる方です。まさにベーコンと対極です。
可士和さんのオフィスの一室です。
ベーコンの話はほかにも面白いことが色々ありますが(母親の下着を身につけているのを父親に見つかって勘当されたとか)とにかく絵も私生活も刺激的な作家です。一番好きな作家なのか?と問われるとどうかわからないのですが、個人的には大学を出た後、先の見通しが立たない時に展覧会で作品を観て絵を描くことに大きく気持ちを前向きにさせてもらった感慨深い作家なので第一回目に取り上げました。とくに最初のインタビューの言葉は大好きで、ベーコンが何を成し遂げようとしていたのかを考えるととても胸の詰まるような思いがします。
またギャンブル癖やアルコール、薬物依存の度合いも高い人だったようですが、その反面従軍医療に自ら志願して従事していたり、多額の寄付を行っていたりと、あまり取り上げられないのですがそのような面もベーコンにはあったようです。作品の表面的な部分に関してはいわゆるグロテスクな部類にみなされる絵なのですが、作品を作る姿勢や作品自体の質からはとても真摯な方だったのではないかということを観ていてよく思います。
以上、第一回フランシスベーコンでした。このようなトーンで第二回目以降も不定期に私の気持ち次第でどんどん取り上げていきたいと思います。
追記
先日紀伊国屋に行った際に新しいベーコンの画集が出版されていたのですが、現在神奈川県立近代美術館 葉山館でベーコンの展覧会が開催されているようでした。この展覧会は4月から渋谷の松濤美術館にも巡回するようです。ベーコンの絵をまとめて見る機会は滅多にないので(ベーコンの作品自体がそこまで多く残っていないため)是非未見の方は鑑賞をお薦めします。
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